アサーティブなコミュニケーションとは、相手が反対したり、交渉したり、断ったりする権利を尊重しながら、自分の意見や要望を率直に伝えることです。一方、攻撃的なコミュニケーションは、非難や威圧、侮辱、しつこい要求などによって相手の権利を軽視し、従わせようとする伝え方です。
態度の強さや怒りの有無、声の大きさだけでは、両者を区別できません。判断の目安になるのは、相手に選択の余地があるかです。相手は、侮辱や脅し、威圧を受けたり、折れるまで圧力をかけられたりせずに返答できるでしょうか。その余地がなければ、穏やかで丁寧な言葉でも、何かを強いている可能性があります。
アサーティブなコミュニケーションと攻撃的なコミュニケーションの違い
- 言葉遣い: アサーティブな伝え方では、「もう少し早く知らせてほしいです」のように、問題や要望を具体的に示します。攻撃的な伝え方では、「こんなことを急に言い出すなんて、ばかじゃないの」のように、相手を攻撃したり威圧したりします。
- 反対意見への対応: アサーティブな伝え方では、相手が返答する余地を残します。攻撃的な伝え方では、嘲笑や報復、しつこい圧力によって、相手の反対や拒否を押し切ろうとします。
- 条件や限度の示し方: アサーティブな伝え方では、その状況で自分がどこまで対応できるかを示します。攻撃的な伝え方では、罰や恐怖を使って相手を従わせます。
率直な言葉は、攻撃的でなくても相手にとって耳の痛いものになることがあります。「私はその決定に反対です」と言われれば、相手は落胆するかもしれません。しかし、相手を落胆させたからといって、敬意を欠いていたとは限りません。また、アサーティブに伝えれば必ず合意できるわけでも、望んだ結果が得られるわけでもありません。
相手に選択の余地があるかを確かめる
次のように自問してみてください。**相手は、侮辱や報復、しつこい圧力、威圧を受けずに、反対したり、交渉したり、断ったりできるだろうか。**これは正式な心理評価ではなく、実際のやり取りを振り返るための問いです。
たとえば、次のように依頼したとします。
「木曜日までに数値を送ってもらえますか?」
「金曜日なら可能ですが、木曜日は難しいです」という返答をきちんと検討するなら、アサーティブなやり取りといえます。そこで「チームのことなんてどうでもいいんですね」と返せば、罪悪感を抱かせて相手を動かそうとするやり取りに変わります。
次は、断る場合の例です。
「その日のシフトには入れませんが、金曜日なら代われます」
相手を攻撃せずに、自分の予定を守る伝え方です。代替案を出すかどうかは、自分で選べます。断ること自体に相手の許可を求めたり、長々と言い訳をしたりする必要はありません。
力関係にも目を向ける必要があります。上司が業務上の正当な要件を示し、従業員に求められる責任を適切に説明することはできます。しかし、意見を求めておきながら、もっともな懸念を伝えた人に不利益を与えるなら、その呼びかけは形だけです。業務そのものを断れない場合でも、従業員には、仕事を進めるうえで支障となっている事情を説明する余地が必要です。
好みとスキル、実際の行動を分けて考えることも大切です。率直な話し方を好んでいても、反論されるたびに相手の話を遮る人もいます。職場では納期について明確に交渉できても、家族からの頼み事には自分の意見を言えず、応じてしまう人もいます。コミュニケーションのパターンは、状況によって変わります。対立スタイル診断では、どれか一つの方法が最善だと決めつけずに、意見の相違にどう対処しているかを振り返ることができます。
一度攻撃的なやり取りをしたからといって、その人が「攻撃的な性格」だとは判断できません。大切なのは、その場で何が起きたのか、同じことが繰り返されているのか、どの行動を変える必要があるのかを考えることです。
同じ仕事量の問題を4つの伝え方で比べる
チームのメンバーが、合意した分担を超える仕事を繰り返しあなたに割り振っているとします。
受け身
「わかりました。追加の仕事も引き受けます」
不安や懸念を伝えず、現実には対応しきれない仕事まで引き受けています。別の状況なら、同じ言葉が心からの同意を表すこともあります。この場面での問題は、自分が対応できる限度を伝えていないことです。
受動攻撃的
「もちろん。どうやら暇なのは私だけみたいですからね」
皮肉で不満をにおわせていますが、どうしてほしいのかは明確に伝えていません。ただし、たまたま作業が遅れたことや、冗談が誤解されたことが一度あっただけで、受動攻撃的なパターンがあるとは判断できません。
アサーティブ
「今週は追加の仕事を3件引き受けたため、もともと担当していた仕事が期限に間に合わなくなっています。残りの仕事を分担し直すか、上司に優先順位を見直してもらえませんか?」
確認できる事実を挙げ、その影響を説明したうえで、具体的な変更について話し合う余地を残しています。
攻撃的
「あなたは怠け者ですね。これ以上私に仕事を押しつけたら、あなたがどれほど役に立たないか、みんなに知らせます」
相手の人格を攻撃し、恥をかかせると脅しています。仕事量についてもっともな不満があっても、このような行動が正当化されるわけではありません。
大声だから攻撃的、穏やかだからアサーティブとは限らない
いら立ちから一時的に声が大きくなり、次のように言うことがあります。
「私を侮辱しないでください。また同じことを言うなら、この場を離れます」
これは脅しではなく、アサーティブに境界線を示している場合があります。ただし、その言い方で相手を怖がらせたり、圧倒したりしていなかったかは振り返る必要があります。怒鳴り続ける、覆いかぶさるように相手に近づく、出口をふさぐといった行動があれば、話は別です。
反対に、穏やかな口調で次のように言う人もいます。
「もちろん断っても構いません。ただ、今後あなたにチャンスを与えるかどうか、誰が決めるのかは覚えておいてください」
静かな口調でも、報復をほのめかしていることに変わりはありません。はっきり断られた後も要求を繰り返せば、声を荒らげなくても、相手に要求をのませようとする圧力になり得ます。
また、声が震えているからといって、アサーティブに境界線を伝えられていないわけではありません。緊張した声でも、相手を尊重しながら自分の要望を明確に伝えることはできます。
口調、話を遮る行為、侮辱、発言のタイミング、繰り返し圧力をかけているかどうかは、いずれも判断材料になります。ただし、一つの手がかりだけでは結論を出せません。視線の合わせ方、表情、姿勢、声の出し方も、文化や障害の有無、ニューロダイバーシティ(脳や神経の働きの多様性)、不安の程度、その場の状況によって異なります。
怒りを感じることと、攻撃的に振る舞うことは別です。怒りは、何かを不公平だと感じていることや、自分の境界線を越えられたことに気づくきっかけになる場合があります。重要なのは、その問題を言葉で伝えるのか、それとも相手を威圧し、侮辱し、罰しようとするのかです。怒り診断では、怒りを感じやすいかどうかと、怒ったときにどう行動するかを分けて振り返れます。怒りを内にためる傾向や、自分の反応がもたらした結果についても振り返ることができます。
自信があるように見せたかったとしても、威圧は正当化されません。同時に、相手が不快に感じたというだけで、攻撃的な伝え方だったと決まるわけでもありません。
境界線と脅しの違いは、誰をコントロールしようとしているか
境界線を示すとは、自分がどう行動するか、どのような条件なら応じられるかを伝えることです。一方、脅しは、恐怖や罰によって相手をコントロールしようとするものです。
次の二つを比べてみましょう。
「侮辱が続くなら、この通話を終えます」
「私に同意しなければ、後悔させます」
最初の発言は、自分がどこまでやり取りを続けるかを示しています。二つ目は、相手を同意させるために報復をちらつかせています。
侮辱が繰り返される場合、通話を終える、会議から退出する、それ以上の話し合いを断るといった対応が適切なこともあります。相手がその対応に不満を持ったとしても、反対する自由まで奪っているわけではありません。
ただし、「私はこうする」という言い方なら、何でも境界線になるわけではありません。「同意しなければ、あなたの個人的なメッセージを公開する」は、自分の行動について述べていても、相手に同意を強いる発言です。言葉の形だけでなく、その目的や、相手に及ぼす影響に注目してください。
アサーティブな伝え方を4つの要素で組み立てる
伝えたいことを整理するときは、事実、影響、要望、返答の余地という四つの要素が役立ちます。
- 起きたことを説明する。「ここ2回の会議は、予定の終了時刻を過ぎました」
- その影響や、自分にとって必要なことを説明する。「そのため、次の予定に遅れてしまいました」
- 具体的な要望や、自分が対応できる限度を伝える。「今日は4時に退出する必要があります」
- 相手が返答できる余地を残す。「私に関わる議題を先に扱うか、その部分は文書でやり取りできませんか?」
まとめると、次のようになります。
「ここ2回の会議は、予定の終了時刻を過ぎたため、次の予定に遅れてしまいました。今日は4時に退出する必要があります。私に関わる議題を先に扱うか、その部分は文書でやり取りできませんか?」
「あなたは私の時間を尊重していない」と責めるのとは違い、相手の動機を決めつけずに問題を説明しています。
相手の話を聞くことも、アサーティブなコミュニケーションの一部です。返答に耳を傾け、相手が何を気にかけているのかを受け止めます。「話し合いにもっと時間が必要なのはわかります。ただ、私は4時に退出しなければなりません」。このように、自分の境界線を保つことと、相手の気持ちを理解することは両立できます。相手の気持ちをどう理解しているかを振り返るには、共感力診断も役立ちます。
相手の意見を受け止めることは、同意することでも、自分が示した限度を取り下げることでもありません。敬意をもって話を聞いたからといって、一度断ったことについて、必ず交渉し直す必要があるわけでもありません。
日常のやり取りで使えるアサーティブな表現
場面によって言い方は変わりますが、お互いが自分で選び、返答できる余地を大切にする点は共通しています。
家事などの分担
「今週は毎晩、夕食の準備も後片づけも私がしているよね。このままだと負担が大きいから、分担を見直したい。今夜は後片づけをお願いできる? その後で、1週間の分担を相談したいんだけど」
「あなたは何もしてくれない」と決めつけずに、負担の偏りについて話し合える表現です。相手が別の分担案を出す余地を残しつつ、現状を変えたいという要望を明確にしています。
親しい相手と意見が食い違うたびに、相手を失うのが怖くなったり、距離を置いたり、頼ることに抵抗を感じたりするなら、言葉遣いだけの問題ではないかもしれません。愛着スタイル診断では、こうした場面での対処の傾向を振り返れます。結果は、人間関係での自分のあり方を固定的なタイプに決めつけるものではありません。程度に幅があり、変化することもある傾向として捉えてください。
友人にやめてほしい冗談
「私の恋愛のことを冗談にされるのは嫌なんだ。その話題は出さないでほしい」
やめてほしいと伝える前に、その冗談が誰にとっても不快なものだと証明する必要はありません。それでも冗談が続く場合、その会話から離れることと、仕返しに友人を侮辱することは別です。
購入した商品に問題があったとき
「届いた商品が破損していました。交換か返金を希望しています。どのような対応が可能でしょうか?」
商品の問題について、毅然とした態度で対応を求めて構いません。接客担当者を攻撃する必要はありません。担当者に判断する権限がなければ、侮辱するよりも、対応できる人への取り次ぎを求めるほうが役立ちます。
攻撃的に伝えてしまった後の対応
自分の言動がエスカレートしていると気づいたら、さらに強く主張を繰り返すのではなく、いったん止まりましょう。侮辱や相手の動機の決めつけ、「あなたはいつもこうだ」とひとくくりにする表現をやめ、問題を言い直して、具体的な要望を一つ伝えます。
たとえば、次のように言い直せます。
「自分勝手だと決めつけてしまって、ごめんなさい。私に確認のないまま予定が2回変わったことが気になっています。今後は、変更を決める前に話し合いませんか?」
問題だと感じていることは取り下げずに、自分の言動に非があったと認めています。「不快にさせたならすみません」では、焦点が自分の行動から相手の受け止め方に移るため、同じようには伝わりません。
すぐに許したり、同意したりするよう求めず、相手が答える余地を残しましょう。安全が保たれている状況で、気持ちを落ち着けるために休憩が必要なら、相手を罰するために黙り込むのではなく、いつ話し合いに戻れるかを伝えます。感情の高ぶりに気づくこと、自分の反応を調整すること、その背景にある気持ちや要望を言葉にすることは、それぞれ別のスキルです。情動的知能(EQ)診断では、これらについて振り返ることができます。
謝罪や言い直しを、その後の行動の変化につなげることが大切です。言葉でどれほど丁寧に謝っても、同じ侮辱や圧力、報復を繰り返すなら、相手が安心して自由に返答できる状態は取り戻せません。
やり取りを続けないほうがよいとき
脅し、虐待、ストーカー行為、威圧がある場合や、報復が怖い場合に必要なのは、単に言い方を工夫することではなく、安全を確保するための支援です。状況によっては、話し合いを続けるよりも、連絡を断つ、より安全な連絡手段に切り替える、信頼できる人や適切な支援機関に助けを求めることが重要になります。
危険が差し迫っている場合は、緊急の支援を求めてください。どれほど言い方を工夫しても、相手が境界線を尊重するとは限りません。アサーティブな伝え方は、安全を確保するための計画や、専門的な支援の代わりにはなりません。
難しい会話の前後に確認したい5つの質問
自分の性格全体を評価するのではなく、具体的なやり取りに目を向けてください。
- 相手の人格を攻撃せずに、問題を説明したか?
- 自分の要望や、自分がどう対応するかを伝えたか?
- 相手には、断る、反対する、交渉する余地が残されていたか?
- 話を遮ったり、反対されたことへの仕返しをしたりせず、相手の話を聞いたか?
- 言い方がきつくなりすぎた場合、それを認めて謝罪や言い直しをしたか?
自分だけで振り返ることには限界もあります。繰り返し圧力をかけていたことを軽く見たり、丁寧な言葉を使っていたから問題ないと思ったりすることがあります。反対に、対立への恐れから、単に率直なだけの表現を攻撃的だと感じることもあります。自分の意図だけでなく、実際に使った言葉や、相手に不利益をちらつかせていなかったか、同じ行動を繰り返していないかを確認しましょう。最近の具体的なやり取りについて、信頼できる人に意見を聞くことも役立ちます。「私はアサーティブですか?」よりも、「あなたが返事をした後も、私は同じ要求を繰り返していましたか?」と尋ねるほうが、具体的な気づきを得やすくなります。
どのスキルに難しさを感じるかを整理したい場合は、Testfyのアサーティブネス診断でも振り返れます。依頼する、断る、意見を言う、断られたときに受け止めるといったスキルや、強く出すぎる傾向を扱う自己報告式のテストです。臨床的な診断でも、あなたの人格を客観的に判定するものでもありません。回答には、質問の捉え方やそのときの状況が反映されます。結果を自分に貼るラベルにするのではなく、具体的な行動と照らし合わせて活用してください。
次に練習する行動を、一つ選んでみましょう。相手の人格を評価する代わりに事実を説明する、必要以上に言い訳をせずに断る、相手が話し終わるまで待ってから返すなど、実際にできたかどうかを確かめられる行動が適しています。目指すのは、全員を同意させることではありません。相手が返答する余地を残しながら、自分の立場を明確に伝えることです。

